判断停止を構造で見る
経営判断が止まる原因を、個人差ではなく構造として捉えます。
Research
臨床組織科学(COS)に関わる主要概念の定義を、参照資料としてまとめています。論文中で用いられる用語の正確な意味、関連する理論的源流、より詳しい解説ページへのリンクを記載しています。
APPLICATION BRIEF
用語理解で終わらせず、経営判断、現場観察、介入設計にどう接続するかを示します。
経営判断が止まる原因を、個人差ではなく構造として捉えます。
現場の行動や会議体に現れる反復パターンを読みます。
介入の順序、強度、観察すべき変化を設計します。
CONCEPT POSITION
どの階層を見て、何を変え、何を守るのかが分かります。
個人、相互作用、会議体、業務、組織ルーティン
安定を再生産している関係性と判断パターン
フィードバック、役割、リズム、環境、記録
自律性、透明性、参加、取消可能性
ORIGINAL FIGURES
論文掲載図表は、原典の記録として論文ページにまとめています。このページでは、概念の位置づけをサイト側の図解で整理します。
50音順 | アルファベット順 | カテゴリ別
中核概念 | 介入技法 | 理論的源流 | 実装プロトコル | 認識論
組織の行動状態空間において、系が擾乱の後に戻ろうとする安定したパターン。状態変数は物理的量ではなく、コミュニケーション応答パターン、意思決定プロトコル、感情表現規範、習慣的協働行動などの組織的観察可能量。 理論的源流:Kauffman (1993)、Stacey (2010) 注:COSにおける用法は、複雑系科学の概念を組織現象に適用したものであり、物理的厳密等価性の主張ではない。 関連ページを読む
COS実装の初期段階。新しい実践が組織リズムに導入されたばかりで、参加には能動的なファシリテーションが必要であり、認知的努力を要する段階。 対概念:自律的フェーズ 理論的源流:Fogg (2019) 関連ページを読む
2-on-1構造において、二者の関与共有によって発生する社会的力の差分。アトラクター遷移の確率を高める構造条件として機能する擾乱。 理論的源流:Lewin (1951)、Simmel (1908)、Prigogine (1984) 関連ページを読む
神経基盤設計の4軸のひとつ。構造化された感謝表明を通じた対人信頼の構築を担う。 用語注:「親和的結合」という用語は、より狭義の神経生物学的ラベル(オキシトシン系など)よりも理論的特異性を控えめに表現するために選択されている。 理論的源流:Algoe et al. (2010)、Uvnas-Moberg (1998) 関連ページを読む
ポジティブ情動状態が個人の思考-行動レパートリーを拡張するという、Barbara Fredrickson による理論。3Good1Moreプロトコルの認知的メカニズム仮説の理論的源流。 注:Fredrickson理論に関連する特定の比率主張(3:1の魔法の比率)は方法論的批判を受けている(Brown et al., 2013)。COSの応用は中核命題(ポジティブ情動の認知拡張効果)のみに依拠する。 関連ページを読む
神経基盤設計の4軸のひとつ。反復とアンカー設計による習慣形成を担う。 理論的源流:Kandel (2006)、Fogg (2019) 関連ページを読む
COSにおいて組織アトラクターを構成する状態変数。コミュニケーション応答パターン、意思決定プロトコル、感情表現規範、習慣的協働行動など。物理的状態量ではなく組織的観察対象を指す。 関連ページを読む
COSが統合する4つの学問領域のひとつ。ミクロ階層を担う。個別の行動と習慣形成のレベルでの介入設計原理を扱う。 主な源流:Fogg (2019)、Wiener (1948)、Meadows (2008) 関連ページを読む
行動や態度を直接変えようとするのではなく、行動を生み出している相互作用構造そのもの——相互作用パターン、フィードバック・アーキテクチャ、習慣的行動列——に介入する手法。COSにおける介入論の根幹。 対概念:行動的介入、表層的介入 関連ページを読む
COSにおける神経科学の位置づけを表す概念。神経科学は独立した説明的必要性ではなく、行動的・関係的介入設計を理論的に整合させる枠組みとして機能する。神経測定や直接介入は行わない。 関連ページを読む
組織のアトラクターが特に深く、2-on-1で十分な擾乱が生じない場合に用いられる場の勾配理論の拡張プロトコル。三者から第三者へ関与を差し向ける。心理的安全性の前提条件がより強く要求される。 関連ページを読む
ループ変換設計の中核プロトコル。批判的・発達的フィードバック("More")は、3つの真正なポジティブ観察("Good")が表明された後でのみ許容される、という構造的ルール。 理論的源流:Wiener (1948)、Meadows (2008)、Fredrickson (2001) 関連ページを読む
COSの倫理的ガバナンス4原則のうち、基礎原則。組織メンバー一人ひとりの自律性と尊厳を、介入設計における不可侵な制約として扱う。 対応する医療倫理概念:自己決定権 関連ページを読む
COS実装が成熟した段階。参加が能動的促しなしに自己持続するようになり、新しい組織メンバーが組織規範への社会化の一環として実践を自然に取り入れるようになる段階。新しい組織アトラクターが安定して自己再生産している状態。 対概念:意志的フェーズ 暫定的時間予測:約6ヶ月(検証可能な仮説として提示) 関連ページを読む
COS 3技法の一つ。日次・週次・月次の組織リズムを通じて、関係的・神経学的基盤を構築する基礎技法。場の勾配理論とループ変換設計の前提条件として機能する。神経活動の直接測定や操作は行わない。 4軸構成:可塑性軸、親和的結合軸、動機維持軸、身体感覚軸 関連ページを読む
COSが統合する4つの学問領域のひとつ。理論的整合層(コヒーレンス層)として機能する。COSは神経測定や直接介入を行わず、神経科学は行動的・関係的介入設計を理論的に裏付ける枠組みとして用いられる。 関連ページを読む
Amy Edmondson(1999, 2018)による概念。対人的リスク知覚が、チーム内の学習行動と業績の決定的な調整因子であるという理論。COSにおいては「醸成すべき文化的成果」ではなく、「特定の実践によって構造的に設計される条件」として再定義される。 関連ページを読む (COSフレームワーク全体)
Karl Weick(1995)による概念。組織メンバーが曖昧な経験から集合的に意味を構築する過程。COSにおいては、擾乱が生じた後に新しいアトラクター状態を安定化させるメカニズムとして扱われる。 関連ページを読む
個人レベルの行動習慣が、相互作用を通じて、組織レベルのアトラクター遷移へと立ち上がる経路を説明する多階層メカニズム。COSの中核的理論主張のひとつ。 3階層:個人レベル(習慣化された行動入力)→ 相互作用レベル(擾乱された相互作用列)→ 組織レベル(変化したルーチン、新しいアトラクター) 理論的源流:Kandel (2006)、Feldman & Pentland (2003)、Kauffman (1993) 関連ページを読む
COSが統合する4つの学問領域のひとつ。メソ階層を担う。個人の心理がどのように集合的な組織現象へと集約されるかを扱う。 主な源流:Lewin (1951)、Edmondson (1999, 2018)、Weick (1995) 関連ページを読む
Feldman & Pentland(2003)による概念。組織における反復される行動パターン。参加者がもたらす行動入力の体系的変化によって、ルーチンは変化する。COSの創発の橋の理論的橋渡しを提供する。 関連ページを読む
神経基盤設計の4軸のひとつ。予測可能な報酬構造を通じた内発的動機の継続を担う。 理論的源流:Schultz et al. (1997) 関連ページを読む
COSの倫理的ガバナンス4原則のうち、アカウンタビリティ原則。いかなるCOS介入構造も、クライアント組織または個人組織メンバーの要求に応じて撤回または修正可能であること。 対応する医療倫理概念:治療を拒否・中止する権利 関連ページを読む
場の勾配理論の中核実装プロトコル。二者が第三者に対して、注意・関与・コミュニケーションのエネルギーを差し向ける三者の意図的配置。影響勾配を発生させ、組織アトラクターを擾乱する。 関連ページを読む
COS 3技法の一つ。三者構造に意図的な非対称性を設計することで、組織の既存パターン(アトラクター状態)を擾乱する技法。 理論的源流:Lewin (1951)、Simmel (1908)、Kauffman (1993)、Prigogine (1984) 関連ページを読む
Kurt Lewin(1951)による理論。行動は個人特性と環境の関数である(B = f(P, E))という命題から、行動を変えるには場(環境)を変えなければならないという構造的介入の論理を導く。 関連ページを読む
Stuart Kauffman(1993)らによる概念。非線形・経路依存的に振る舞い、アトラクター状態を持つシステム。COSは組織を複雑系の中の複雑系として捉え、各個人もまた複雑系である階層構造を扱う。 関連ページを読む
COSが統合する4つの学問領域のひとつ。マクロ階層を担う。組織を非線形・経路依存的な複雑適応系として捉える視点を提供する。 主な源流:Kauffman (1993)、Stacey (2010)、Prigogine (1984)、Bertalanffy (1968) 関連ページを読む
Edgar Schein(1999, 2001)による概念と実践。実践者が組織システムに埋め込まれ、継続的・反復的に関与する組織開発のモード。COSの「臨床」姿勢の系譜にある先行伝統。 関連ページを読む (COSフレームワーク全体)
Wolfram Schultz らによる神経科学的理論。ドーパミン系が報酬の予測と実際の報酬の差分に反応するという発見。神経基盤設計における動機維持軸の理論的源流。 関連ページを読む
医療における臨床医の姿勢を表す比喩。距離を取った診断ではなく、患者のベッドサイドにいて継続的に観察し介入する態度。COSの「臨床」概念およびDroRの研究実践ファームとしての姿勢の核となる比喩。 関連ページを読む (COSフレームワーク全体)
COS 3技法の一つ。組織コミュニケーションの自己増幅型正フィードバック・ループを、自己修正型負フィードバック系へと変換するサイバネティクス設計。中核プロトコルは3Good1More。 理論的源流:Wiener (1948)、Meadows (2008)、Fredrickson (2001) 関連ページを読む
COSにおける核心的概念。医療における「臨床」と同様、距離を取った診断・処方ではなく、システムに埋め込まれた継続的な関与・観察・介入の姿勢を指す。方法論的姿勢であると同時に、自律性・透明性・参加・取消可能性という倫理的姿勢を含意する。 関連ページを読む (COSフレームワーク全体)、関連ページ
複雑系科学・神経科学・組織心理学・行動科学を統合した、複雑な組織における構造的介入のための統合的フレームワーク。組織変革を「行動変容のプロジェクト」から「構造的介入の問題」へと再定義する。 論文:Yamanaka & Nakamori (2026). Frontiers in Psychology, Vol.17. 関連ページを読む
ジンメル(1908)による三者構造の動態の一つ。三者のうち二者が共通の方向を取ることで、第三者との関係に非対称性が発生する状態。場の勾配理論における2-on-1構造の社会学的基盤。 関連ページを読む
以下は、文脈によって表現が異なるが同一概念を指す用語の参照表です。
| 別称・表記揺らぎ | 正式項目 |
| エマージェンス・ブリッジ | 創発の橋 |
| 体性感覚軸 | 身体感覚軸 |
| ジンメル的非対称性 | 三者構造の非対称性(→2-on-1構造の項) |
| 4学問領域 | 学問領域(→各領域の独立項目を参照) |
| 必要的要件 | 倫理的ガバナンスの4原則 |
本用語集および各COS概念ページで参照される主要文献の一覧です。完全な参考文献リストは論文(Yamanaka & Nakamori, 2026)をご参照ください。
Edmondson, A. C. (1999). Psychological safety and learning behavior in work teams. Administrative Science Quarterly, 44(2), 350–383.
Feldman, M. S., & Pentland, B. T. (2003). Reconceptualizing organizational routines as a source of flexibility and change. Administrative Science Quarterly, 48(1), 94–118.
Fogg, B. J. (2019). Tiny habits: The small changes that change everything. Houghton Mifflin Harcourt.
Fredrickson, B. L. (2001). The role of positive emotions in positive psychology. American Psychologist, 56(3), 218–226.
Kandel, E. R. (2006). In search of memory. W. W. Norton.
Kauffman, S. A. (1993). The origins of order. Oxford University Press.
Lewin, K. (1951). Field theory in social science. Harper & Row.
Meadows, D. H. (2008). Thinking in systems: A primer. Chelsea Green.
Schein, E. H. (1999). Process consultation revisited. Addison-Wesley.
Simmel, G. (1908/1950). The sociology of Georg Simmel (K. H. Wolff, Ed.). Free Press.
Stacey, R. D. (2010). Complexity and organizational reality. Routledge.
Weick, K. E. (1995). Sensemaking in organizations. Sage.
Wiener, N. (1948). Cybernetics. MIT Press.
Yamanaka, M., & Nakamori, M. (2026). Clinical Organizational Science. Frontiers in Psychology, 17.
本用語集は、COS研究プログラムの進展に応じて継続的に更新されます。新しい概念の追加、既存定義の精緻化、用例の追加などが、論文の発展と共に反映されていきます。
用語の定義について、誤りや改善提案がある場合は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。COSは閉じた体系ではなく、学術コミュニティとの対話の中で継続的に洗練されていく研究プログラムです。
RESEARCH TO PRACTICE
論文や概念の理解にとどめず、経営課題、組織診断、変革テーマの設計へ接続して検討できます。
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